タイで携帯電話の契約は意外と簡単
約20年前にタイに来たとき、当時に日本ではまだほとんど使われていなかった携帯電話がタイではすでに使われ始めていました。しかしその理由は「固定電話の電話番号が足りないので中々番号が取れないから(当時)番号を取りやすい携帯電話でとりえず電話を用意した。」という消極的なものでした。当時の携帯電話はプラスチックの筆箱を3つ重ねたくらい大きかったものです。しかしタイで携帯電話の利用が日本に先行していた、というのは妙に印象に残りました。
しかしその後携帯電話は日本で急速に広がり「iモード」の広がりとともに「やはり日本にはかなわない」という思いがありました。しかしその後タイにもどんどん新機能機が搭載され、今日では電車(BTS)に乗るとブラックベリーを操作している人が必ず一人はいる、くらいのところまで進歩しています。こうした進歩を可能にしたタイの携帯電話事情についてここで紹介しましょう。
通信システムだけじゃない日本の「ガラパゴス」
よく日本の携帯電話システムは欧米と違ったシステムを使っているため「ガラパゴス」だ、といわれたりします。これは離島のガラパゴス島でゾウガメなどが独自の進化をしてきたことを比喩としていっているわけですが、この理由は日本の携帯電話で使われている通信システムが現在であれば第3世代のW-CDMAやCDMAx1方式であるのに対して世界の主流が別系統のシステムであるGSMシステムを採用していることが大きいのです。これらの通信システムに互換性はないため日本の携帯電話をタイに持ってきても使えない(逆もまた然り)ということになるわけです。
また日本の場合は携帯電話の本体の開発・販売にも携帯通信事業者が深く関わっているため、SIMを入れ替えればすぐに他社と切り替えられるというわけに行きません。他にも契約形態にも特徴があります。それに比べればタイのケースの方がよりグローバルスタンダードに近いといえるでしょう。
タイのメインは「プリペイド」、SIMは入れ替え自由
タイでは携帯通信サービス事業者(以下、携帯電話会社)と携帯端末メーカーは原則別個に動いています。このため基本的な購入方法としては
1)ショップで携帯電話本体を見て気に入った本体を選ぶ
2)同じ店(あるいはいい電話番号がなければ別の店でも可)でSIMを購入、別に購入してあった携帯電話に装着する
という形です。タイでは携帯電話料金の支払方法に先払い(プリペイド方式)と後払い(ポストペイド方式)がありますが現在シェア的には「プリペイド」が8割強と圧倒的に多くなっています。(ただし法人の場合はポストペイドがほとんど)
SIMにロックはかかっていないのでどの携帯電話にどこの携帯電話会社のSIMを入れても使えます。電話番号が変わってもよければ何度でも変更しても構わないわけです。各携帯電話会社は次々に新しいプロモーションを出してくるためタイ人の中には1つのプロモーション期間が終わったらSIMを買い換えて次にプロモーションに乗り換える、という使い方をする人もいます。
プリペイドのサービスを利用する場合はその購入方法は非常に簡単で、最近2010年前半に購入した限りでは身分証の提示も必要ありませんでした。一時携帯電話の振動モーターが爆弾の起爆装置として多用されたために南部を中心としてプリペイドサービスの購入時の身分証明書確認が義務付けられたはずですが有名無実化しています。海外から来た知人でもパスポートも出すことなく購入できましたからあっけなさすぎる、というくらい簡単でした。
一方、ポストペイド方式の登録をする場合は外国人の個人であればパスポートと労働許可証の提示が必要です。法人の場合は会社登記書のコピーと会社の代表権者の身分証明書コピーなどが必要になります。
携帯電話会社はどこがいいか?
タイには現在以下の5社の携帯電話会社があります。
AIS 業界最大手。プリペイドサービス「1,2CALL」を展開。マーケットシェアは約44%(2008年)
D-TAC AISとほぼ同時期に開業もシェアは約30%と引き離されている。プリペイドサービス「HAPPY」を展開。
TRUE MOVE 開業は遅かったものの、インターネットサービスやケーブルテレビとのグループ化で知名度をアップ。シェアは約24%。
TOT 固定電話サービスからの進出で、CATとの合弁会社との統合などで出遅れている。シェアは約0.7%
HUTCH タイで唯一CDMA方式を採用。互換性が低いためかシェアは0.1%未満と低迷。
各社の料金のプロモーションの中には「同じ電話会社の携帯にかければ通話料が無料」といったサービスもあり、こういったサービスを生かすにはシェアの大きい会社の方がいいというのはあります。もっともタイ人は一人で携帯を何個も持って1台はAIS、1台はD-TACなどと使い分ける人も珍しくはありません。それはこういうプロモーションを生かす方法の一つな訳です。大手3社であれば携帯電話網もほぼタイ国全土をカバーしており、実用上大きな差はありません。(ただしタイ東北部ノンカーイの対岸にあるラオスの首都ビエンチャンに行った際はAISの携帯は使えましたがD-TACは使えませんでした。)後はその場その場のプロモーションを比較して購入すればよいでしょう。
携帯電話のハードとしては、タイでもシェアが大きいのはこの世界の巨人NOKIAなんですが、近年は安さとスタイルで韓国のサムスンも随分シェアを伸ばしています。しかしそれでもハイエンドについては次に記すようにブラックベリーやi-Phone(今後は当然i-Pad)に食われており、世界の携帯電話競争の波に飲まれている感じがします。
タイでも携帯電話番号を持ち運び
日本ではすでに2006年10月から始まっている「番号ポータビリティ制度」(略称:MNP)ですが、タイの国家通信委員会は9月1日からの導入を決定しています。ただし大手通信業者が導入に否定的だったこともあって実際の導入は少し遅くなりそうです。
新しい物好きのタイ人の流行
それにしてもタイ人の新しい物好きには感心します。カメラ付の携帯の流行も早かったですし、i-Phoneなどでもまだ値段が一番高いうちに買いに行く人が多いのには驚きました。そして現在はブラックベリーが巷に大流行しており、会社員はもちろん学生とおぼしき女性までバスやBTSの中で操作しています。正直ブラックベリーなどは会社のスタッフクラスの月給よりはるかに高い金額なのですが…もっとも一応からくりはあって、彼(女)らはまったく新規に購入するわけではなく、新機種が出たところで手持ちの携帯をショップに売って、差額を新たに足して新しい携帯を買う、というサイクルを繰り返すのだそうです。それであれば旧機種の値段が安くなりすぎないうちに早く売って新しいものに買い換えるのが賢明、ということになるわけですね。それでも学生あたりでは大分親のすねをかじっていると思われます。
日本語でタイの携帯電話からメールやネットの操作をしたい場合
日本人のニーズとしてはどうしても「日本語」で携帯からメールを送りたい、届いた日本語のメールを読みたい、というニーズが出てくると思うのですが、それを実現するサービス提供しているのが携帯ショップのJ.GLOBEです。ここではJ-PACKという「フリーソフトを利用して対応できる携帯電話を日本語化するサービス」を行っています。このサービスを利用することで日本語サイトの・メールの閲覧、日本語によるメール作成・送信がタイで購入した携帯電話からできることになります。ニッチな市場ではありますが確実に需要はありそうです。
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